〈健康貯筋しんぶん vol.10〉

なぜヨガは「なんとなく良い」のか?
科学が解き明かす、神経系と古代の智慧の驚くべき共通点 

ヨガのクラスの最後、シャバーサナからゆっくりと起き上がったとき。 

まるで心の霧が晴れたような、あるいは温かい毛布に包まれたような、得も言われぬ「心地よさ」を感じたことはありませんか? 

多くの人が「なんとなく良い」と表現してきたこの主観的な感覚。

実は私たちの脳と身体の深部では、極めて精密な反応が起きています。

最近注目されている神経科学の考え方から見ると、ヨガは単なるストレッチではなく、心と体の緊張を整え、自律神経の働きをととのえていく時間とも考えられています。

私たちは、頭で考える前に、まわりが安心できるかどうかを無意識に感じ取っています。ヨガは、その「安心を感じ取る力」にどのような変化をもたらすのでしょうか。

自律神経は「2つ」ではなかった 

これまで、自律神経は「活動の交感神経」と「休息の副交感神経」という、アクセルとブレーキのような2分割モデルで説明されてきました。しかし、ステファン・W・ポージェス博士が提唱した「ポリヴェーガル理論」は、その常識を鮮やかに塗り替えました。 

この理論では、私たちの神経系には「3つの階層(ラダー)」があると考えます。 

▶︎腹側(ふくそく)迷走神経:安心・つながりのシステム 他者の温かい笑顔や穏やかな声に反応し、心身がリラックスして社会的な交流を楽しめる状態。これこそが、生命が最も健やかに輝くベースキャンプです。

▶︎交感神経:闘争・逃走のシステム 脅威に対して「戦うか逃げるか」を選択する、エネルギーに満ちた興奮状態。 

▶︎背側(はいそく)迷走神経:シャットダウンのシステム 過度なストレスに対し、死んだふりをするように感覚を遮断し、身を守る停滞の状態。 

ポイントは、これらがバラバラに存在するのではなく「はしご(ラダー)」のように重なっている点です。私たちは、状況に応じてこの階層を絶えず昇り降りしているのです。 

神経系と「3つのグナ」の完全一致 

驚くべきことに、この最新の科学モデルは、数千年前のヨガ哲学が説く「3つのグナ(万物の性質)」と、鏡合わせのように一致しています。 

▶︎サットヴァ(純質・調和) = 腹側迷走神経 心が澄み渡り、穏やかで満たされている状態。まさに、神経系が「安心・つながり」のモードにある時の質感を指しています。 

▶︎ラジャス(激質・活動) = 交感神経 ソワソワと落ち着かず、エネルギッシュで攻撃的にもなりやすい状態。生存のために活動を促す交感神経の働きそのものです。 

▶︎タマス(鈍質・停滞) = 背側迷走神経 身体が重く、やる気が出ず、心を閉ざしてしまう状態。過度な負荷から身を守るための「シャットダウン」反応と見事に対応しています。 

最先端の神経科学と、古代のヨギーたちが内観を通して見つめてきた知恵。 時代もアプローチも異なりますが、どちらも人間の心身のあり方を深く見つめている点で、重なる部分があるように感じられます。

ヨガが「整う」理由を科学的に再定義する 

ヨガの実践で私たちが体験する変化を、ポリヴェーガル理論の「はしご」の概念で整理してみましょう。神経系には順序があり、私たちは急に状態を飛び越えることはできません。


【前】心が重く、やる気が出ない(タマス/背側迷走神経) 

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【ヨガ介入】 ダイナミックなポーズで身体に熱を入れ、適度にエネルギーを高める。 

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【結果】 一度「ラジャス」の活力を通ることで、停滞から抜け出し、最終的に「サットヴァ(安心)」の階層へと昇ることができる。 


【前】イライラして落ち着かない(ラジャス/交感神経) 

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【ヨガ介入】 深く長い吐息に意識を向け、ゆっくりとした動きを行う。 

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【結果】 昂ぶった神経をなだめ、闘争モードから「サットヴァ(安心)」へとソフトランディングする。 

ヨガは、今の自分の心と体の状態に気づき、呼吸や動きによって、安心しやすく整った状態へ近づいていくための時間ともいえるでしょう。

この一致は、私たちがマットの上で感じる変化が、決して気のせいではないことを証明してくれています。


これまでヨガは、感覚的なもの、あるいは経験してみないとわからないものとして受け取られることもありました。

けれども近年では、呼吸や姿勢、緊張と弛緩のくり返しが心身にどのように関わるのかを、神経科学の視点から説明しようとする動きが広がっています。 

もちろん、古代から伝わるヨガの知恵と、現代の科学はまったく同じものではありません。 それでも、どちらも人の心と体の状態を丁寧に見つめているという点で、重なる部分があるように感じられます。 

こうした視点を知ることで、ヨガは単なる運動ではなく、 自分の状態に気づき、呼吸や動きを通して整えていく時間として、より身近に捉えやすくなるかもしれません。 

日によって、心と体の状態は少しずつ違います。 落ち着かない日もあれば、重だるさを感じる日もあります。 そんなときこそ、今の自分に気づきながら、無理のない呼吸と動きで整えていくことが、毎日を少し過ごしやすくする助けになるのではないでしょうか。

 当スタジオでも、こうした視点を大切にしながら、 呼吸・姿勢・感覚を丁寧に見つめる時間を提供していきたいと考えています。

※本記事は、ヨガに関する情報を発信する国内大手メディア「ヨガジェネレーション」の記事を参考資料として、当スタジオで内容を整理のうえ掲載しています。


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